「ステンレス」と「コバルト」の話

stainless

「ステンレス」「コバルト」の違いは…?
コバルト鋼のハサミは良いの?

ステンレス」も「コバルト」もシザーの販売でよく表記されている用語ですよね。
ざっくり書きますので、シザー選びの参考にしてみてください。

金属は、さまざまな元素を添加することによって特性を得ることができます。
ハサミのような刃物で使われるステンレスとは、鉄(Fe)を主体とし炭素(C)とクロム(Cr)を添加した合金鋼です。クロムによって、錆びにくいという特性を持っています。

錆びにくい特性は、水場で使われることの多い理容シザーにとって必須ですので、現在出回っている理容シザーはこのステンレス製のモノがほとんどです。

また、クロム以外にも、さまざまな物質を組み合わせることによって多くのステンレス鋼材が登場してきました。組成によって持っている特性が異なっており、それぞれ鋼材の名前がついています(例えば「SUS440c」や「VG-10」などです)。

理容シザーでは、鋼材によって「ステンレス系」と「コバルト系」に分類されています。
「コバルト系」とはコバルト(Co)を添加し、硬度や耐食性を改良したステンレス鋼材のことです。

シザー販売で言われている「コバルト」とはこのことで、つまりこれもステンレスの一種です。
(この他に、純コバルト製品や 高コバルト率の製品なども存在し、「ステンレス」の定義から離れるものもありますが、いったん置いておきます…)

「コバルト系」の場合、コバルトの添加によって硬度と耐摩耗性が高まり永切れするようになっている傾向があります。私の主観ですが、確かに鋼材としても優秀でバランスのとれたものが多いです。
「コバルト」と表記されているものにはそういうメリットがあります。

しかしながら…

「コバルト系」と記載されていても、正確に何の鋼材であるかは記載されていないことがあります。なのでそれだけの情報では鋼材の良し悪しには判断がつきません。必ずしも良いとは言えません。
一般的に、高級シザーにコバルト系鋼材が用いられていることが多いので、「コバルト=高品質」というイメージが浸透し、もてはやされている部分があるのかもしれません。

また、鋼材自体が優れたものであったとしても、ハサミの能力は、構造そのものや刃付けによって大きく左右されますので、鋼材のみに目を向けてハサミを選ぶのは危険が伴います。

ハサミ購入の時は、あまり鋼材だけにこだわらずに、信頼のおける相手から、裏スキの精度、刃線の形、ハンドル形状がしっくりくるかなどの全体的なバランスで選ぶと良いと考えます。