ハサミの観察
お預かりしたハサミの使用感を確認し、解体して観察します。
どのような素材か、どのような使用歴があるのか、過去にどんな研ぎがされたのか、刃の状態や反り具合はどうか…
といった要素を観察し、問題点を確認します。この段階で全体の方針を決めて研ぎにかかります。
表刃の研磨
オモテ面を削り、磨きます。段刃のものは段刃、ハマグリ刃のものはハマグリ刃に合わせて研ぎます。
ペーパーやバフを使用します。用途に合わせて研磨剤を変え、主に毛髪の捉え方や流し方を調整しています。
裏刃の研磨
ウラ刃は平砥石を用いて手で行います。ハサミに応じて、様々な種類の砥石を組み合わせて研磨します。メンテナンスの中で最も重要になる精密加工が裏刃の研ぎです。
毛髪は裏刃で切っています。この研ぎ方によって切れ方と全般の性質が決まってくるので、慎重に行っています。
面直しした砥石に乗せてただ擦っているだけというわけではありません。触点から切っ先にかけての偏った摩耗を解消しつつ、最適な面を構成します。
反り(そり)調整
反り調整はハサミを叩いて行います。根元から切っ先まで、バランスの取れたアーチ状に整えます。反りが強すぎると刃と刃のアタリが過剰になり、弱すぎると力が足りない状態になります。
お預かりしているハサミを見ていると、先端にかけて反りが失われているような状態のハサミが多いです。こういった状態だと、しっかり反り調整を行わなければいくら研磨しても解決しません。
フィッティング
フィッティング…と大雑把に述べましたが、正確には
・ヒットポイントとハンドルの傾き調整+切先の刃揃え
・ネジ・ワッシャーの調整・クリーニング
・先端調整…
といったあたりは、必ず確認する項目です。必要に応じて行います。
ハサミを永く使ったり研いだりすると、厚み方向にも摩耗して少しずつ薄くなります。薄くなったぶん、「ネジを限界まで締めても開閉感が緩い」というもありますので、調整を加えます。
チェックカット
ウィッグで使用感を試します。
また、研ぎ上げた直後のハサミは硬い切れ感になっていますので、これを実用のレベルまで慣らして安定させます。
最後に拭き上げて注油します。